賃貸募集をしていると、

「フリーレント1ヶ月」

「フリーレント2ヶ月」

という募集条件を見かけることがあります。

オーナーの立場からすると、

「家賃をもらえない期間を作るなんて損ではないか」

と思うかもしれません。

例えば、家賃10万円の部屋でフリーレントを2ヶ月付ければ、20万円分の家賃収入を放棄することになります。

数字だけを見ると、確かに損をしているように見えます。

一方で、もしフリーレントを付けなかった結果、空室期間が3ヶ月続いたらどうでしょうか。

この場合の機会損失は30万円になります。

単純な比較であれば、フリーレント2ヶ月の方が結果的に収入が多くなることもあります。

私自身、アセットマネジメントの仕事をしていた頃、フリーレントに対する考え方は保有目的によって大きく変わることを経験しました。

比較的短期間で売却を予定している案件では、家賃を下げて募集するのではなく、賃料水準は維持したままフリーレントを活用することで、レントロールを整えることを重視するケースがあります。

なぜなら、投資用不動産は賃料収入をもとに価格が評価されることが多いからです。

例えば、月額賃料を1万円上げると、年間では12万円の収入増になります。

これを利回り4%で評価すると、

12万円 ÷ 4% = 約300万円

という計算になります。

ここでポイントになるのが、フリーレントの使い方です。

フリーレントは「家賃を値下げする」のではなく、「一定期間だけ家賃を無料にする」という募集方法です。

例えば、本来であれば家賃を1万円下げて募集するところを、家賃は維持したままフリーレントを付けることで、入居者には「初期費用が抑えられて割安に見える」状態をつくります。

一方で、オーナー側は高い賃料水準を維持できるため、売却時にはその賃料をベースに評価され、結果として資産価値の維持や向上につながる可能性があります。

つまり、フリーレントは単なる値引きではなく、見せ方を工夫しながら出口での価値を高めるための手段として使われることもあるのです。

一方で、個人オーナーや事業会社などが長期保有を前提としている場合は、考え方が少し変わります。

毎月の家賃収入そのものが重要になるため、フリーレントには慎重になることが少なくありません。

私が担当していたオフィスビルでは、1年間のフリーレントを設定したこともありましたが、マンションではここまで長いフリーレントはあまり一般的ではありません。

保有目的や物件の特性によって、最適な方法は変わります。

だからといって、長期保有ならフリーレントを避けるべきという話でもありません。

空室が長引くくらいであれば、フリーレントを活用して早期に入居を決めた方が、結果的に収益が安定するケースもあります。

大切なのは、

「フリーレントを付けるか、付けないか」

ではなく、

「空室期間と比較して、どちらが合理的か」

を考えることです。

結局のところ、フリーレントは得なのでしょうか。損なのでしょうか。

答えは一つではありません。

どちらが正しいという話でもありません。

売却を重視するのか。

インカム収入を重視するのか。

空室リスクをどう考えるのか。

立場が変われば、最適な選択肢も自然と変わります。

不動産を、ひとつの見方で終わらせない。

フリーレントについても、同じことが言えるのかもしれません。